研究の背景

東日本大震災での宗教

 未曾有の大災害に、多くの人が救援に駆けつけたが、宗教者の救援活動も迅速であった。現地へ先遣隊を送り、宗教界全体が安否確認・救援活動へと動いた。被災地では、100以上の宗教施設が緊急避難所となり、被災者が数ヶ月以上にわたり避難生活をし、地域資源としての宗教施設の重要性が明らかになった(稲場圭信『利他主義と宗教』2011年、弘文堂)。研究代表者(稲場)は、研究分担者(黒崎・板井)ら宗教学者とともに、インターネット上に「宗教者災害救援ネットワーク」、および「宗教者災害救援マップ」を立ち上げ、情報収集と後方支援のプラットフォーム作りをした。さらに、宗教者災害支援連絡会(代表:島薗進)の世話人として、宗教者の災害支援活動の情報交換会を継続的に開催している。

 宗教者災害支援連絡会に関わっている研究者により、被災地での宗教者の活動の聞き取り調査も実施された。上記の調査から、被災地で宗教は地域資源として一定の力を発揮したことが明らかになった。すなわち、宗教施設には、「資源力」(広い空間と畳などの被災者を受け入れる場と、備蓄米・食糧・水といった物)があり、檀家、氏子、信者の「人的力」、そして、祈りの場として人々の心に安寧を与える「宗教力」があった (稲場圭信・黒崎浩行編著『震災復興と宗教』2013年、明石書店)。一方で、宗教間の協力、宗教施設と自治体、ボランティア組織との連携という点では課題を残している。海外の研究においては、災害時における宗教の活動が検証され、政策に活かされている。日本でも震災後に研究が進んでいるが、海外と比べると、研究の上でも政策の面でも遅れている感は否めない。

 

災害救援マップ

 各地域の防災の取り組みとしての防災マップは存在するが、全国の指定避難所および宗教施設を集約したマップは存在しなかった。2012年11月、大阪大学・未来共生イノベーター博士課程プログラム(文部科学省採択)の一環として予算がつき、研究代表者が責任者となり、全国の指定避難所および宗教施設、合計30万件のデータを集積した「未来共生災害救援マップ」を構築した。